お役立ち記事パンフレット制作に役立つハウツー本
『パッと伝わる!公務員のデザイン術』
世の中には、会社案内や社内報などのパンフレット・広報ツール制作に役立つ本はたっくさんありますよね。が!逆に多すぎて、どれを読めばいいのか迷っちゃいませんか?
そこで、店長・イツマが実際に買って読んで、編集やデザイン、ライティングに役に立ったハウツー本をピックアップ。
まだ担当になって間もないとか、ひとり広報になって不安な方などなど、特にビギナーの方にやる気とスキルを届けてくれる、そんなハウツー本のご紹介です。
BOOK DATA
【書名】『パッと伝わる!公務員のデザイン術』
【著者】佐久間智之
【発行】学陽書房(2018年5月23日)
【概要】今日からすぐにできる、公務員のためのデザインノウハウ本!通知書、おしらせのチラシ、イベントのポスター、ホームページなど、住民の反応がガラッと変わるデザインがわかる!本書には、色使いや書体、写真の使い方から、キャッチコピー、わかりやすい文章作りのコツまで、住民の目を惹くデザインのコツが満載!○×の具体例でどこを直せば良いかのポイントを的確に解説しているので、誰でも簡単に「住民にメッセージがきちんと伝わる1枚」がつくれる!
【お役立ちジャンル】ライティング/デザイン/写真撮影/Web ほか
目次
パンフレット制作ビギナーに勇気&スキルを与えてくれる良書
2回目は『パッと伝わる!公務員のデザイン術』と題されたこちらの書籍。
「公務員の〜」とタイトルにはありますが、大丈夫です。公務員じゃなくても、パンフレットや広報ツールの制作に関わっている方なら、きっと役に立つ内容なので。
この本の一番のポイントは、著者の経歴にあります。
実は著者の佐久間さん、プロのデザイナーでもライターでも編集者でもありません。じゃあ何者!?って感じですが、この方、本書が発行された時点では、町役場で働く公務員さんなのです!
私もこれまで結構クリエイティブ系のハウツー本を見てきましたが、公務員さんが書かれたデザイン本はさすがに知りません。しかもそれが分かりやすいんですから、オススメしたくもなるわけです!
プロじゃないから語れるパンフレット作成のポイント
では、本書のおすすめポイントを挙げるとこんな感じです。
①ノンプロ目線の説得力
②良い例と悪い例がリアル
③1見開き1ポイントの解説で終えている
まずは、「ノンプロ目線の説得力」について。
著者の佐久間さんは、プロデザイナーでもライターでもありませんが、とはいえ、ごく普通の公務員さんでもありません。
町役場に入庁して、広報・プロモーション担当となった後、独学でデザインや写真撮影、ライティングスキルなどを身につけ、そして、広報誌をすべてひとりで制作するようになると、2015年にはその広報誌が全国広報コンクールで内閣総理大臣賞を受賞!自治体広報誌の日本一になられた方なのです!
なんだかドラマにでもなりそうな、サクセスストーリーですよね。
で、これの何がすごいって「広報誌日本一」という結果ももちろんですが、「ゼロから独学で」という過程こそがポイントだと思うんです。
つまり著者は、ただのノンプロではなく「独学で結果を出した」ノンプロなのです。
そんな方が本書の「はじめに」では、こんなことを語っています。
日々の業務の中で、住民向けの通知書やイベントのチラシなどを、雑誌のデザイナーでもない我々「公務員」は作らなければなりません。けれど、限られた時間で、プロのようなデザインをすることは、ハードルが高いと思われがちです。
実は、ちょっとしたポイントを押さえれば、プロ並みの通知書やチラシを作ることができます。
皆さんはデザインの「ルール」を知らないだけなのです。「センス」は必用ありません。
いかがでしょう?独学で日本一の広報誌をつくった方がこう言っております。ちょっと勇気、出ませんか?
これ、独学で結果を出した方だからこその説得力だと思うんです。デザイナー歴ウン十年のプロが同じことを言っても、なかなか響かないですよね。「あんたプロだからそんなこと言うんだ〜!」みたいなね。
また、「住民向け」を「読者向け」に、「公務員」を「広報担当者」などに変換すれば、多くのツール制作担当の方々にあてはまりますよね。
実際、紹介されているノウハウは、誰でもパッと実行できそうな即効性・再現性の高いものが多いんです。
かつて、ご自身が業務の中で本当に困って、悩んで、試行錯誤して、その上で解決できたことをベースに書かれているから説得力あるし、説明も分かりやすいんでしょうね。終始、教科書的な指導というより先輩のアドバイスみたいな、読者に近い目線で書かれていますから。
この「読者に近い目線」こそが、本書の一番のオススメポイントなのです。
世の中のライティングやデザインのハウツー本って、当たり前ですがほとんど業界のプロがクリエイター志望の人や、まだ歴の浅いプロに向けて伝えています。
そうすると時折、専門用語が当たり前のように出てきたり、どうしても目線が高くというか、上からになっていることがあるように感じます。
一応この業界のプロである私でも、デザインやライティングのハウツー本に読みにくさを感じ、途中で本をそっと閉じたことは何度もありますからね。
私の場合は特にWeb系の本。気づいたら脳がフリーズして、白目むいてることがよくありますよ。
でもこの本は、徹底して低い目線で、難しい言葉は使わずに書かれているので、そういう点もビギナー向けの本だと思います。
ちなみにですが、現在、著者の佐久間さんは役場を退職され、広報・プロモーション・デザインなどのコンサルティング会社を起業されているそうです。正真正銘プロになられたわけですね。これもすごい……グレイトです。
チラシやポスターの悪い作成例がリアルで分かりやすい
次に、「良い例と悪い例がリアル」な点について。
どういうことかと言いますと、本書の冒頭では、このように具体的にチラシやポスターなどの「良い例」と「悪い例」を掲載し、細かくどこが良いのか悪いのかを指摘しています。
こうやって、NG例とOK例をビフォア・アフター的に並べる見せ方は、デザイン本などではよくあります。
ただ、先述したプロがプロを目指してる人向けに書くデザイン本だと、特に悪い例の方で「そ、そんなに悪くないような気が……」ということが時々あるんですよね。
例えばこれとか。
いや、良い例の方とじっくり見比べたり、解説を読んだりすれば「あー確かにね」とは思うんです。でもやっぱり、悪い方も、これはこれで良い気が……と思ってしまうことがあるんです。
これって、プロ向けのデザイン本は、そこそこレベルのデザインを、さらに良くするためには?という視点で書かれているからだと思います。平均点前後のデザインを80点まで上げる方法、みたいな。
で、その平均点のデザインをつくったのもプロデザイナーさんですから、直すところはあれども、そこまでひどくはなかったりするんですよね。
でも、見てくださいこの本の悪い例を。本当に悪いんです(←ほめてます)。
ね。誰もが「これはないな〜」と感じるレベルです(←ほめてます)。
しかも、なんとなく既視感ありませんか?失敗の仕方に。特に、タイトルを反射させてる部分なんて「確かに見たことあるぞ、こういうチラシ」みたいな。
こんな感じで、悪い例がリアルなので直感的に理解できるし、解説文も納得して読めるんです。これは良い例もしかりで、直感的に良くなっていることが分かりやすい。ビフォア・アフターの差が明確なんです。
きっと著者自身の失敗や、実際に目にして「分かりにくいなあ」と思った失敗例を挙げているからこそのリアリティなのでしょう。
このリアリティこそが、読みやすさの推進力になっていることは間違いありません。
パンフレット制作のポイントが1見開きで完結
では最後の「1見開き1テーマで終えている」点。
本書ではこんな感じで、1見開き1テーマで解説を終えています。ですので、話があっちこっちにとんだりせず、コンパクトに内容がまとめられています。
しかも、文字が大きいんですよね。なので見やすいというだけでなく、1ページに掲載されている情報量がそこまで多くないんです。
情報量が多くないというと、なんだかデメリットのように聞こえるかもしれませんが、違う言い方をすると、伝えたいポイントがしっかり絞られているんです。
伝えたいこと一点集中で、ムダな言葉で飾らずシンプルに伝えてくれています。だから読んでいて楽なんです。
プロって、なまじっか知識があるのでウダウダとしゃべったり、書いたりしてしまう傾向がありますよね。はい……自覚しています。自戒を込めて書いてマス。
でもこの本は、1見開き1テーマで、コンパクトに絞ったポイントを次々と提供してくれるので、ページをめくりやすいんです。これも、読みやすさの推進力になっていますね。
なので、ハウツー本を最後まで読み切ったことがない方にも、向いているかもしれません。
というわけで、本書の3つのオススメポイントについて詳しく書いてきましたが、いかがでしたでしょうか。
パンフレットや広報ツール制作のコツって、本書の著者が言うように「センス」よりも、単にそのコツを「知ってるか知らないか」だったりするんですよね。
なので、知識が増えればそれだけツールづくりが楽になる部分はあると思います。そして楽になれば楽しくもなってくるはず!
今後も、あなたの制作作業を楽に&楽しくしてくれる、そんな1冊を紹介していきます!