お役立ち記事パンフレット制作に役立つハウツー本
『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』
世の中には、会社案内や社内報などのパンフレット・広報ツール制作に役立つ本はたっくさんありますよね。が!逆に多すぎて、どれを読めばいいのか迷っちゃいませんか?
そこで、店長・イツマが実際に買って読んで、編集やデザイン、ライティングに役に立ったハウツー本をピックアップ。
まだ担当になって間もないとか、ひとり広報になって不安な方などなど、特にビギナーの方にやる気とスキルを届けてくれる、そんなハウツー本のご紹介です。
BOOK DATA
【書名】『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』
【著者】井上ひさしほか
【発行】新潮社(平成14年1月1日)
【概要】まず原稿用紙の使い方、題のつけ方、段落の区切り方、そして中身は自分の一番言いたいことをあくまで具体的に―。活字離れと言われて久しい昨今ですが、実は創作教室、自費出版は大盛況、e‐メールの交換はもう年代を問いません。日本人は物を書くのが好きなんですね。自分にしか書けないことを、誰が読んでも分かるように書くための極意を、文章の達人が伝授します。
目次
文章の書き方が分からない方に最適な1冊
まず第1回目は、ライティングに役立つこの1冊『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』です!この本は、小説家・戯曲作家の井上ひさしが、一般の方向けに開催した「作文教室」の様子をもとにしています。
井上ひさしといえば、NHK人形劇『ひょっこりひょうたん島』の原作に携わったり、劇団「こまつ座」で数々の舞台作品を上演したり、小説家としても直木賞をとるなど、幅広いジャンルでユーモアと風刺の入り混じった作品を生み出し続けた方。
さらに、作家という枠を超えて、ほとんど言語学者と思えるほど日本語に詳しく、知識も理解が深い方なんですよね。
そんな井上ひさしが、一般の方向けに、つまり書くことを生業としていない方向けに文章術の極意を伝えているので、全体的に小難しさのない、とっても分かりやすい内容になっています。
トークを聞くような感覚で文章の書き方が分かる
さらにオススメのポイントをまとめると、だいたいこの3つが挙げられます。
・本文が話し言葉(口語体)だから読みやすい
・テクニックというより普遍的な真理が書かれている
・基礎的なライティングのポイントがほぼ網羅されている
まずは、読みやすいという点について。
仕事柄、これまでたっくさんライティングや文章術に関する本を読んできましたが、どうしても理屈っぽくなりがちで、途中からしんどくなってくるんですよね。
でもこの本には、そういった読みにくさはありません。
なぜなら、井上ひさしが「作文教室」において、受講生の皆さんに実際に話した内容がベースになっているため、本文が口語、つまり話し言葉で構成されているからです。
その上、井上さんらしいユーモアも交えながら話されているので、実際にトークを聞いているような感覚でスラスラ読むことができるんです。
エッセイを読んでいるようなとっつきやすさ、といえば分かりやすいかもしれません。なので、文章を読むのが苦手な方にも適しているんじゃないかなと思います。
プロも忘れがちな文章作成の真理が満載
そして肝心の内容も、今まで私が読んだ文章に関する本の中で、「普遍的な内容」にふれているという点ではベストだと思っています。
今流行りの文体だとか、Webで読者をぐっとつかむ書き出し、みたいなことは書かれていません。そもそも20年近く前の本ですからね。
でもその代わり、20年後の今でも、十分に役立つ文章のポイントがしっかり書かれているんです。つまりライティングのテクニックというより、普遍的な真理が書かれているんですよね。
え?真理ってなに?という方のために、本書の目次をいくつかピックアップしますので、ちょっと読んでみてください。
・作文の秘訣を一言でいえば、自分にしか書けないことを、だれにでもわかる文章で書くということだけなんですね。
・「読み手」のことを考えることが、実は「だれにもわかるように書く」ことなんですね。
・書いたから終わったわけではない。読み手の胸に届いたときに、自分の書いた文章は目的を達成し、そこで文章は終わるわけです。
・優れた文章書きは、なるべく小さく千切ったものを、相手に次々に提供していく。
・「いきなり核心から入る」ことが大事なんです。
・自分を指す人称代名詞は、ほとんどの場合、削った方がいいんです。
という感じです。
どれも文章を書く上で本当に大切なポイントなのですが、この6つのポイントが共通して示している文章の真理って何か分かりますか?
それは、「相手軸」で文章を書きましょう、ということです。
これがなかなか難しいんです。人間、文章を書いているとどうしても「自分軸」で、つまり主観で書いてしまうんです。さら厄介なのが、この自分軸って、懸命に書けば書くほど強くなりがちなんですよね。
ですから、一番最初の目次である、
・作文の秘訣を一言でいえば、自分にしか書けないことを、だれにでもわかる文章で書くということだけなんですね。
という一節は、本当にその通りで、この一文を見て思ったのが、文章がうまく伝わらない時って、前半の「自分にしか書けないこと」に力が入り過ぎていて、後半の「だれでもわかる文章で書く」ことがおざなりになっている状態なんだな、ということです。
文章は自分のためではなく相手のために書くものという、プロライターも忘れがちな、いつの時代にも通じる真理を、6つの目次のように色んな角度から説明してくれている1冊なのです。
文章作成の基礎的なポイントをほぼ網羅
これまで多くのライティングの本を読んできましたが、アプローチや語り口は違えども、指摘しているポイントは結構かぶっていたりします。
それって、決して著者の方が手抜きしているわけではなく、そのかぶってる部分こそどの著者も大切だと思っている基礎的で本質的なポイントなんですよね。
そして本書には、そうした多くのライティング本が挙げている基礎的な部分が大体、網羅されていると感じます。
ですから、ライティングや文章術の本っていっぱいあるけどどれから読めばいいのか分からん!とお嘆きの方や、忙しくてあれこれ読んでる暇がない!という方にぴったりなポイントがまとめられた入門書ともいえるし、今流行りの文章スキルとかじゃなく、ずっと使えるライティングの本質みたいなのを知りたいんだけどなあ、とお考えの方にも適した教科書的な1冊ともいえると思います。
以上なんだかやたらと褒めておりますが、実際私はこの本を定期的に引っぱり出しては、ウンウンうなずきながら読んでますからね。そしてその度に、編集ライターとして初心に返らせていただいております。
お仕事でもプライベートでもライティングの必要がある方は、ぜひ一度、読んでみてください!